株式会社ツムラは、20代〜60代の男女3,000人を対象に「第4回 なんとなく不調に関する実態調査」を行いました。ツムラでは、自覚しながらもつい我慢しがちな症状や、調子が悪いものの病名の診断がつかない症状の総称を「なんとなく不調」と定義し、2021年より「なんとなく不調」に関する生活者調査を行っています。
今回の調査では、2023年に「なんとなく不調」を感じた人は80.0%と前年(72.1%)よりも増加し、30代女性では9割と最も高い結果が出ています。また、「なんとなく不調」を感じる日数は1カ月のうち平均9.5日で、1カ月のおよそ3分の1は「なんとなく不調」を感じていることが分かりました。
主な調査結果は以下の通りです。
2023年、20代〜60代の8割が「なんとなく不調」を実感、30代女性は最も高く9割が実感
●2023年は全体の8割(80.0%)が「なんとなく不調」を実感し、2022年(72.1%)から7.9ptも増加。特に30代の女性は9割(90.0%)が「なんとなく不調」を感じており、最も多い結果に。
●「なんとなく不調」のうち上位の症状は、「疲れ・だるさ」「目の疲れ」「肩こり」「頭痛」。この傾向は昨年(第3回)と同様。
●「なんとなく不調」の要因は、「睡眠不足」「やる気が出ない」「加齢」「気温の寒暖差が激しい」という回答が上位に。
一カ月の1/3も「なんとなく不調」を実感、なのに医療機関を受診しない人が増加傾向に
●「なんとなく不調」を感じる日数は1カ月のうち平均で9.5日。1カ月のおよそ3分の1は「なんとなく不調」を感じている。
●一方で、「なんとなく不調」で医療機関を受診するのは29.5%。前回(35.7%)より受診する人が減少。
●「なんとなく不調」を感じなかったらしてみたいことは、「軽い運動」「趣味の活動」「国内旅行」。
2024年、約8割が「なんとなく不調」ありと予想
●2024年、全体の約8割(79.4%)が「なんとなく不調」を感じそうと予想。
●「なんとなく不調」として予想される症状は、「目の疲れ」「疲れ・だるさ」「肩こり」「睡眠に関する問題」「イライラ感」。
「第4回 なんとなく不調に関する調査」調査概要
実施時期:2023年12月4日(月)~12月7日(木)
調査手法:インターネット調査
調査対象:全国の20代〜60代男女3,000人(性・年代別に各300人ずつ、男女各1,500人)
調査委託先:マクロミル
※構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。
詳細な調査結果は下記の通りです。
全体の8割が自覚する「なんとなく不調」 男女とも前年より増加
ツムラでは、自覚しながらもつい我慢しがちな症状や、調子が悪いものの病名の診断がつかない症状の総称を「なんとなく不調」と定義し、2021年より「なんとなく不調」に関する生活者調査を行っています。
20代〜60代の男女3,000人を対象に、2023年を振り返り日常生活で心身になんとなく調子が悪いと感じることがあるか、聞きました。すると、「非常によくある」(17.2%)、「時々ある」(33.0%)、「たまにある」(29.8%)と答えた人が多く、全体の8割(80.0%)がなんとなく不調を感じていました。2022年(第3回調査)では72.1%がなんとなく不調を自覚していましたが、今年は7.9ptも増加しています[図1-1]。なんとなく不調を感じる人は、男性(75.7%)より女性(84.3%)に多く、男女とも前年より増加(男性+8.3pt、女性+7.5pt)しています。中でも20代女性(88.0%)・30代女性(90.0%)・40代女性(87.0%)は、ほぼ9割がなんとなく不調を感じています[図1-2]。
[図1-1]
[図1-2]
「なんとなく不調」を感じる症状の上位は、疲れ・だるさ、目の疲れ、肩こり、頭痛 上位10症状はいずれも男性より女性に多い
図1でなんとなく不調があると答えた2,401人に具体的な症状を聞きました。すると、約2人に1人が「疲れ・だるさ」(53.4%)、「目の疲れ」(49.7%)、「肩こり」(48.1%)、「頭痛」(47.9%)を感じたと回答しました。男性は「目の疲れ」(47.7%)、「疲れ・だるさ」(47.5%)、「肩こり」(39.9%)、女性は「疲れ・だるさ」(58.6%)、「頭痛」(56.8%)、「肩こり」(55.5%)が上位に挙げられました。女性の方が総じてスコアが高めですが、特に「頭痛」は18.9pt(男性37.9%、女性56.8%)、「冷え」は20.3pt(男性11.9%、女性32.2%)もの男女差が生じています[図2-1]。
[図2-1]
また、性・年代別で見ると、「疲れ・だるさ」「目の疲れ」はどの性・年代でも高いのに対し、「肩こり」「頭痛」「イライラ感」は20代・30代の女性に多い傾向が見られました[図2-2]。
[図2-2]
「なんとなく不調」の要因を聞くと、「睡眠不足」「やる気が出ない」「加齢」「寒暖差」が上位に
引き続き、なんとなく不調があると答えた2,401人に、なんとなく調子が悪いと感じる要因として考えられるものを挙げてもらいました。すると、「睡眠不足」(38.3%)、「やる気が出ない」(36.2%)、「加齢」(34.3%)、「気温の寒暖差が激しい」(33.2%)が上位に挙げられました[図3]。世界的にも睡眠時間が短いことで知られる日本人は、なんとなく不調の要因も睡眠不足と考える人が多いようです。また、2023年は記録的な猛暑が長く続いたことも、なんとなく不調に影響した可能性が考えられます。
[図3]
「なんとなく不調」を感じる症状の1位「疲れ・だるさ」 その要因は「仕事関係のストレス」「睡眠」「加齢」「気象の変化」
なんとなく不調の症状として最も多かった「疲れ・だるさ」を挙げた人にその理由を自由回答で答えてもらいました。すると、「仕事で責任を持つべき立場に変わったこと」(男性20代)、「社内の人間関係でコミュニケーションが取れないから」(女性50代)など、仕事関係のストレスを挙げる声が多く聞かれました。ほかにも、「睡眠時間が取れず寝不足で前日の疲れが残った」(女性30代)などの睡眠に関する問題や、「寒暖差が激しい日が続き、ストレスが解消できずたまる」(男性30代)といった天候の変化によるもの、また、40代以降では「更年期になり日々体調が変化するため」(女性40代)、「加齢による体調の不調、やる気や自信の低下」(男性60代)などの年齢(加齢)によるものが挙げられました[図4]。
[図4]
1カ月のうち平均9.5日は「なんとなく不調」を感じているのに約7割は病院を受診しないまま
なんとなく不調を感じる2,401人に1カ月のうち何日程度なんとなく不調を感じるか聞きました。すると、平均で9.5日となり、1カ月のおよそ3分の1は、なんとなく不調を感じていることが分かりました。また、20代・30代では男性より女性の方が不調を感じる日数が多い傾向にあり、40代以降(50代男性除く)では、なんとなく不調を感じる日数が多くなり、10日を超えています[図5]。
[図5]
次に、なんとなく不調を感じたときに病院を受診するかと聞くと、「不調を感じる都度受診する」8.5%、「不調の程度が重くなりそうだと思った時に受診する」21.0%となり、なんとなく不調を感じたときに、病院を受診する人は29.5%にとどまりました。前年は35.7%が受診すると答えていることから、病院する人の割合は6.2ptも減少しています[図6]。1カ月の3分の1もの期間なんとなく不調を感じている一方、なんとなく不調を感じても、病院を受診する人は減っているようです。
[図6]
なんとなく不調を感じる人に、なんとなく不調を感じることがなければ何を行いたかったか聞きました。すると、「軽い運動」(34.7%)、「趣味の活動」(28.7%)、「国内旅行」(23.2%)などのアクティビティが上位に挙げられました。一方で「家事」を挙げた人も22.8%いました[図7]。なんとなく不調は、日常の楽しみだけでなく、生活にも影響を及ぼしています。
[図7]
2024年「なんとなく不調」予想 約8割が「なんとなく不調」を予想、症状は「目の疲れ」「疲れ・だるさ」「肩こり」
2024年はどの程度なんとなく不調を感じそうか、予想してもらいました。すると、「非常に感じそう」13.7%、「時々感じそう」29.5%、「たまに感じそう」36.2%となり、全体の約8割(79.4%)が2024年はなんとなく不調を感じる1年と予想しています。なんとなく不調を感じそうと回答した人は男性(75.1%)より女性(83.7%)に多く、30代女性(88.7%)・40代女性(88.3%)は約9割と多くなっています[図8]。
[図8]
では、2024年のなんとなく不調はどんな症状が多くなりそうか、29の症状※を挙げ、各症状別になんとなく不調を感じる程度を4段階(「ほぼ毎日感じそうだと思う」「時々感じそうだと思う」「めったに感じないと思う」「症状を感じることはないと思う」)で答えてもらいました。すると、「ほぼ毎日感じそうだと思う」「時々感じそうだと思う」と答えた人が多い症状は、「目の疲れ」(71.7%)、「疲れ・だるさ」(66.7%)、「肩こり」(60.6%)、「寝つきにくい・目覚めが悪い・眠りが浅い・不眠」(52.5%)、「イライラ感」(50.4%)の順となりました。
男女別で見ると、男女ともトップ3は「目の疲れ」「疲れ・だるさ」「肩こり」と同じですが、男性は次いで「鼻水・鼻づまり」(47.2%)「腰痛」(45.3%)の順に、女性は「冷え」(62.2%)、「寝つきにくい・目覚めが悪い・眠りが浅い・不眠」(60.1%)の順となっています。また、男性に比べると女性の方がスコアが高くなっています[図9]。
※選択肢の29の症状:頭痛、肩こり、目の疲れ、鼻水・鼻づまり、微熱、めまい、のどの痛み・せき、のどのつかえ感、冷え、貧血、食欲不振、神経痛・関節痛、腰痛、筋肉のけいれん・足がつる、腹痛、胸やけ・はきけ、下痢・消化不良、便秘、頻尿・排尿痛・排尿困難、寝つきにくい・目覚めが悪い・眠りが浅い・不眠、疲れ・だるさ、むくみ、肌荒れ(にきび・しっしん等)・しみ、イライラ感、ほてり・ホットフラッシュ、不安感、憂うつ、言葉にしにくい不調 [女性と回答した方にのみ提示:生理痛・生理不順]
[図9]
内科医・漢方処方医の福島先生に聞く、「なんとなく不調」を訴える人が増えている理由
今回の調査結果について、内科医で漢方処方医の福島偉(ふくしま・たかし)先生に解説していただきました。
■医療の現場でも「なんとなく不調」を訴える人が増えています
私は内科医であり漢方処方医として、地域に根差したかかりつけ医を目指しています。最近、漢方外来に限らず「なんとなく調子が悪い」と受診する方が増えているように感じます。今回の調査では、約3割の方が「漠然とした不安」をなんとなく不調の要因に挙げています。今の日本社会を覆う閉塞感のようなものが、漠然とした不安となりわれわれの不調の要因につながっていることも、なんとなく不調を訴える人が増える一因と考えられます。現代社会では、将来の不安を感じる人も少なくない中、不安をあおるように感じられる情報に触れ、自律神経の不調を訴える人の増加につながっているのではないでしょうか。
■なんとなく不調と睡眠、因果関係は不明だが睡眠障害は不調の要因に
また、なんとなく不調の要因としてトップに挙げられたのが「睡眠不足」でした。効率化や生産性が優先される社会では、会社や社会の要求がどんどん高くなり、それに応えるために必死になって働かなくてはいけない、そんな環境に追い込まれている人がいます。そのために睡眠時間を削ったり、体は疲れているのになかなか寝付けなかったり、睡眠の質も量も十分にとれていない人が増えているようです。睡眠に関連する病気の総称は睡眠障害と呼ばれます。睡眠となんとなく不調の因果関係ははっきりとはしていませんが、眠れないことが不満や不安、それらに起因する不調の要因となることは確かだと思います。
■女性に「なんとなく不調」が多い理由
男性と女性で比較すると、なんとなく不調を感じる割合は女性に多く、中でも20代・30代に多い傾向が見られました。その要因として挙げられるのが「月経」です。女性は、月経周期に伴い女性ホルモンの変動が起こり、心身にも影響が現れます。そのうえ、日常生活において一定の労力を求められ無理をしてしまうことで、不調を感じることも増えています。また、月経により鉄分が失われ、「鉄欠乏性貧血」と診断される女性も多く見受けられます。鉄欠乏性貧血は、慢性的にゆっくり進行するのが特徴で、体が順応し強い症状が出ないため、なんとなく不調の訴えで来院されます。閉経後には、貧血の改善に伴い不調が改善されるケースも多くあります。女性では特に、月経に伴う不調症状や鉄欠乏性貧血が生じやすいことが、不調の多さにも影響しているのではないでしょうか。また、女性は男性と比べ筋肉量が少なく、体温が上昇しにくいことから「冷え症」になりやすいことが知られています。たかが冷えと軽く考えがちですが、血流が悪くなり冷えてしまうので、体に必要な栄養が行き届かず老廃物が蓄積されてしまい、いろいろな不調が現れやすくなります。寒さが厳しい冬は、冷えによる不調が起きやすい環境と考えられます。
■「なんとなく不調」を感じたら、我慢ではなくまずは受診を
全体の8割がなんとなく不調を感じてはいるものの、医療機関を受診する人は3割以下でした。その不調の陰に大きなトラブルが潜んでいることも考えられるので、この程度で…と放置せずに、まずは受診することが重要です。しかし、不調症状を感じて受診しても、検査結果に異常がない場合には経過観察となる事が多いです。それでも、なんとなく調子が悪い場合は、漢方医学にも詳しい医師に相談することをお勧めします。また、せっかく受診するのであれば、受診する医療機関の下調べもしておきましょう。インターネットで調べるだけでなく、信頼できる人にどこがよいか、相談するのもいいですね。また、大きな病院だけでなく、家族みんなが診察してもらえるような身近なクリニックもお勧めです。担当の先生と話をしてみて、コミュニケーションが良好であれば、かかりつけ医になってもらうのも良い選択だと思います。
福島 偉(ふくしま・たかし)さん 内科医・漢方処方医 「みたかヘルスケアクリニック」院長
1994年、杏林大学医学部卒業。医師として高齢者や終末期医療の治療に長く関わり、生活習慣病になる患者さんを減らしたいとの思いから、2009年に「みたかヘルスケアクリニック」を開業。街のかかりつけ医を目指す。
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