ネスレ日本株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役 社長 兼 CEO:深谷 龍彦、以下「ネスレ」)は、「3 Coffee a Day ~1日3杯のコーヒー習慣がいい人生をつくります」をキーメッセージに、1日3杯のコーヒー飲用習慣を提案しています。その取り組みの一環として、この度、カフェインを含むコーヒーとブドウ糖源となる麦芽飲料を組み合わせた飲料を朝食時に摂取することによる認知機能への影響について評価しました。その結果、『実行機能』、『ワーキングメモリ』、『持続的注意力』のスコアが向上することを確認しました。
なお、本研究成果は2022年12月に開催予定の第22回国際栄養学会議(22nd IUNS-ICN)での発表に向け準備を進めています。
「実行機能」:
複数のものごと(仕事、勉強、家事など)を並行して進める際、適切に注意を切り替え、素早く実行する力で、複数のものごとを計画的にすすめるために不可欠なものです。
「ワーキングメモリ」:
視覚、聴覚などを介した情報を一時的に保持し、同時に正しく実行する力です。計画的な行動の実行、問題解決などの場面で不可欠なものです。
「持続的注意力」:
複数のものごとややるべきことに対し、注意を持続させながら作業を続ける力です。複雑な状況下で集中して実行するために不可欠なものです。
研究背景
カフェイン、ブドウ糖による認知機能への影響について複数の報告があります。カフェインおよびブドウ糖を同時に摂取した検討もありますが、通常の食事摂取を想定した研究は限られていました。そこで本研究では、カフェインを含むコーヒーとブドウ糖源となる麦芽飲料を朝食時に摂取した場合の認知機能への影響について評価を行いました。
方法
健康な30~40代19名(男性11名、女性8名)を対象とし、ランダム化プラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較試験を実施しました。テスト朝食(軽食(パン、サラダ)に加え、カフェイン74㎎を含むコーヒーと糖質9.87gを含む麦芽飲料を150mlの牛乳に溶解したもの)もしくは、コントロール朝食(軽食(パン、サラダ)に加え、糖質0.75gのココアを150mlの牛乳に溶解したもの)を提供しました。コントロール朝食はテスト朝食と同一の熱量となるようバター等で調整しました。摂取前および後に、眠気や気分等に関するVAS質問票、コグニトラックス(Cognitrax)による認知機能検査、および内田クレペリンテストによる単純計算量測定を実施しました。ウォッシュアウト期間は1週間としました。
結果
認知機能テスト(コグニトラックス)による評価では、以下の結果が得られました。
テスト朝食摂取後の4パート持続処理テスト(SFCPT)パート2平均正解反応時間は、コントロール朝食摂取後よりも26.9ミリ秒短縮した(p<0.05, 図1) 。反応時間の短縮は注意力(集中力)向上の指標として知られている。
・注意シフトテスト(SAT)正解応答数はテスト朝食摂取後で有意な上昇、正解反応時間はテスト朝食摂取後で56.5ミリ秒短縮した(p<0.05, 図1)。いずれもコントロール朝食摂取前後では差がみられなかった。
・「実行機能」「ワーキングメモリ」「持続的注意力」スコアは、テスト朝食摂取後でのみ有意な上昇がみられた(p<0.05)。
コントロール朝食摂取前後では差がなかった。
VASによる主観評価では、テスト朝食摂取後に眠気の減少、集中力の向上、疲労感の減少、気分の向上が認められましたが(p<0.05, 図2)、コントロール朝食摂取前後では差が認められませんでした。
結論
カフェインを含むコーヒーと麦芽飲料を含む朝食の摂取により、認知機能の一部である実行機能、ワーキングメモリ、そして持続的注意力のスコアの向上が認められました。カフェイン単独の効果として知られている眠気の抑制や注意力の向上以外にも、ブドウ糖で向上することが知られるワーキングメモリのスコアの上昇も見られたことから、カフェインの効果に加えブドウ糖源の補給も結果に影響した可能性が考えられます。等しいカロリーのコントロール朝食ではこうした結果が得られなかったことより、カフェインの入ったコーヒーとブドウ糖源となる麦芽飲料は、認知機能を考える上で重要な朝食の質の向上に役立つ可能性が示唆されました。
<研究概要>
【実施時期】 2022年1月
【試験実施機関】うえのあさがおクリニック
【対象者】 30~40代の健常な男女 19名
【テスト朝食】 麦芽飲料とスプレードライのソリュブルコーヒーを150mlの牛乳に溶解したもの(カフェイン 74㎎/杯)+軽食(パン・レタス・ミニトマト・ドレッシング)計259kcal
【コントロール朝食】 ココア(甘味料も混合)を150mlの牛乳に溶解したもの(カフェインを含まない)+軽食(パン・レタス・ミニトマト・ドレッシング・バター)計259kcal
【試験方法】 ランダム化プラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較試験(単回摂取)
【試験項目】 コグニトラックスによる認知機能検査、VASによる主観評価、内田クレペリン検査による計算量