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  • キリンと花王の共同研究、内臓脂肪と免疫活性に関する日本初の発見

  • 2023/11/30 0:00 公開  編集部
  • キリンホールディングス株式会社と花王株式会社は、和歌山県立医科大学が主宰し、NPO法人ヘルスプロモーション研究センター(以下HPRC)が取りまとめているコホート研究「わかやまヘルスプロモーションスタディ」に参画し、2022年11月から内臓脂肪と、免疫の司令塔(プラズマサイトイド樹状細胞、以下pDC)の活性について、その関連を調査する研究を共同で実施しました。

    近年、肥満がウイルス感染症の重症化につながるなど、肥満と免疫の関連性が注目されており、本研究では、内臓脂肪と免疫活性の関連性を調査しました。内臓脂肪が多いとpDC活性が低い(免疫機能が低い)こと、また、内臓脂肪が多く、かつpDC活性が低いと、新型コロナウイルス感染症・インフルエンザの罹患リスクが高いことを日本で初めて確認しました。この事実は世界でもまだ論文報告されていない発見です。

     

    ■共同研究成果について

    背景・目的

    肥満は、世界保健機関(WHO)によって「異常あるいは過度の脂肪の蓄積により健康リスクが高まった状態」と定義されており、慢性疾患のリスク上昇につながります。肥満が健康にもたらす影響については、世界各国で研究が進められていますが、近年、肥満はウイルス感染症の重症化につながるなど、肥満と免疫の関連性が注目されています。当研究は、2011年から和歌山県在住の方を対象に行われている「わかやまヘルスプロモーションスタディ」の一環として実施しました。生活習慣病に関連が深いとされる内臓脂肪型肥満の研究に長年取り組んできた花王と、免疫領域での研究を35年以上続けてきたキリンが共同研究を行うことで、内臓脂肪とpDC活性の関連の解明をめざすものです。

     

    わかやまヘルスプロモーションスタディとは

    和歌山県の地域住民を対象として、各種疾患の発症に関わる遺伝および環境要因を明らかにすることを目的として、2011年から和歌山県立医科大学が主宰し、現在はHPRCと共同で進めているコホート研究です。これまでは生活習慣や生活習慣病と筋肉量に関する研究を進め、筋肉量の減少と動脈硬化の発症の関係や転倒歴と自発運動量の関係など、いくつもの成果を見いだしてきましたが、免疫機能に関する研究を行うのは今回が初めてです。キリンと花王は、わかやまヘルスプロモーションスタディを通して内臓脂肪量とpDC活性の関連を明らかにすることで、将来的に、お客様の健康リスク低減を目指した取り組みを進めていきます。

     

    研究方法

    2022年11月に和歌山県にて、50~55歳の住民223名を対象とした特定健診を実施し、花王が生活習慣や内臓脂肪面積のデータを取得し、キリンが血液中のpDC活性に関するデータを測定しました。それらのデータを相互に共有し、内臓脂肪とpDC活性の関わりを共同で研究・解析しました。群分けは次のように行いました。内臓脂肪面積について:全被験者の中央値である77cm2を基準とし、77cm2以下の人を内臓脂肪が低い群、77 cm2より多い人を内臓脂肪が高い群としました。

    pDC活性について:全被験者の中央値である9.52%を基準とし、9.52%以下の人をpDC活性が低い群、9.52%より多い人をpDC活性が高い群としました。

     

    結果

    結果①:内臓脂肪面積とpDC活性の関係性

    内臓内臓脂肪面積とpDC活性の関係性を調べた結果、内臓脂肪面積値が高い群は、低い群と比較して、有意にpDC活性が低いことがわかりました(図1)。

    図1 内臓脂肪面積とpDC活性の関係性
    図1 内臓脂肪面積とpDC活性の関係性

     

    結果②:内臓脂肪面積とpDC活性が、感染症の罹患に及ぼす影響

    内臓脂肪面積値が高い群は、低い群と比較して、オッズ比として7倍高く、新型コロナウイルス感染症に罹患していました。一方で、pDC活性の値が低い群は、高い値の群と比較した場合、オッズ比として5倍高く、新型コロナウイルス感染症に罹患していました。

    さらに、内臓脂肪面積とpDC活性の高低による相乗効果を確認することを目的に4群に分けて解析したところ、内臓脂肪面積値が高く、pDC活性の値が低い群は、内臓脂肪面積値が低く、pDC活性の値が高い群と比較して、オッズ比として20倍高く、新型コロナウイルス感染症に罹患していました。同様の結果が、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの両方の罹患との関係でも確認できました。

    図2 内臓脂肪面積 pDC活性と新型コロナウイルスの罹患の関係性
    図2 内臓脂肪面積 pDC活性と新型コロナウイルスの罹患の関係性

    図3 内臓脂肪面積とpDC活性が新型コロナウイルスのみ、新型コロナウイルス・インフルエンザ両方の罹患に及ぼす影響
    図3 内臓脂肪面積とpDC活性が新型コロナウイルスのみ、新型コロナウイルス・インフルエンザ両方の罹患に及ぼす影響

     

    共同研究成果

    本共同研究により、内臓脂肪面積値が高い人では、pDC活性が低いことが、日本で初めて※1わかりました。また、内臓脂肪面積やpDC活性はそれぞれ、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザの罹患しやすさに影響を及ぼし、内臓脂肪面積値が高く、かつpDC活性が低い場合は、罹患が特に起こりやすいことが示唆されました。

    このことから、内臓脂肪面積値が高く、pDC活性が低い人は、内臓脂肪量と免疫機能の両方をケアすることが重要である可能性があります。

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