第一三共ヘルスケア株式会社(本社:東京都中央区)は、生活様式や働き方の変化により重要性が増している「睡眠」に着目し、20~60代の働く男女を対象に「睡眠に関する調査」を実施しました。これらの調査結果を踏まえ、日本睡眠学会専門医の中村真樹先生に睡眠の質改善についてご解説いただきます。
調査サマリー
TOPIC 1:睡眠の状況について
◆平日の平均睡眠時間で最も多い回答は「6時間台」(35.8%)。
◆ミドル世代(40~50代)は他の世代よりも睡眠満足度が低い。特に「50代男性」は6割以上(64.3%)が満足していない。
TOPIC 2:睡眠に関して抱えている悩み
◆睡眠に関して8割以上(81.3%)が「悩みがある」。最も多い悩みは「途中で起きてしまう」(41.6%)。
◆寝つきが悪いと感じる状況の1位は「熱帯夜」(45.2%)。
◆睡眠に関する悩みが生じる原因は「仕事や人間関係によるストレス」(37.2%)が最も多い。一方、睡眠不足によって「精神的ストレス」を感じている人(31.9%)も最も多く、睡眠とストレスが互いに悪影響を及ぼしていることがうかがえる。
TOPIC 3:睡眠の質を向上するための習慣
◆約7割(69.0%)は睡眠の質を良くするために何かしら心がけていることがある。そのうち、心がけていることの1位は「お風呂にゆっくり浸かる」(27.5%)。
◆睡眠満足度別にみると、満足していない人の最も多い回答は「特になし」(29.4%)。
日本睡眠学会専門医の中村真樹先生が解説
中村真樹先生 プロフィール
日本睡眠学会専門医。東北大学医学部卒業・東北大学大学院医学系研究科修了後、東北大学病院精神科で助教、外来医長を務める。その後、睡眠総合ケアクリニック代々木院長を経て、2017年「青山・表参道睡眠ストレスクリニック」を開院。ビジネスパーソン向けの書籍『仕事が冴える眠活法』(三笠書房)を執筆。
TOPIC 4:第一三共ヘルスケアが推進する睡眠に着目した健康経営
◆睡眠の質改善が日中のパフォーマンス向上に寄与。企業が社員の睡眠改善に取り組む意義。
◆働く人の睡眠改善につながる「年に1度の睡眠診断運動」のご紹介。
-調査概要-
■ 実施時期: 2022年6月17日(金)~24日(金)
■ 調査方法: インターネット調査
■ 調査対象: 全国の20~60代の有職者男女 745人
男性 20代:75人、30代:73人、40代:76人、50代:73人、60代:77人
女性 20代:76人、30代:74人、40代:75人、50代:71人、60代:75人
※グラフの構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が必ずしも100%にならない場合があります。
TOPIC1:睡眠の状況について
◆平日の平均睡眠時間で最も多い回答は「6時間台」(35.8%)。
平日(仕事のある日)の平均睡眠時間について聞いたところ、最も多い回答は「6時間台」(35.8%)でした。また、「7時間未満」の人の合計は約7割(66.8%)となり、推奨される7~9時間の睡眠を、多くの人が取れていないことが浮き彫りになりました《図1》。
図1. 平日(仕事のある日)の平均睡眠時間
~中村先生から睡眠改善ポイント!~
「6時間台」の人が多いようですが、医学的にみると、働く世代の睡眠時間は7~9時間が推奨されています。「7時間未満」と回答した約7割の方は睡眠が足りていません。
睡眠不足が3~4日続くと、睡眠不足の状態に身体が慣れてしまい習慣化してしまう、いわゆる「かくれ寝不足」の状態に陥ることがあります。人により必要な睡眠時間に個人差はありますが、休日に目覚ましをかけずに眠り、平日よりも2時間以上長く眠ることがあれば、睡眠時間が足りていない可能性があります。
「子ども・大人・高齢者それぞれで推奨される睡眠時間」
出典:くすりと健康の情報局(第一三共ヘルスケア):リンク
◆ミドル世代(40~50代)は他の世代よりも睡眠満足度が低い。特に「50代男性」では6割以上(64.3%)が満足していない。
次に、睡眠に対する満足度について聞いたところ、「満足していない(全く満足していない+あまり満足していない)」と回答した人は4割を超え(42.5%)、「大変満足している」「満足している」と回答した人の合計(30.2%)よりも10ポイント以上多い結果となりました。性年代別にみると、50代男性の6割以上(64.3%)が「満足していない」と回答。続いて40代男性も半数以上(53.9%)、50代女性も約半数(50.7%)が「満足していない」と回答しており、ミドル世代は睡眠に対する満足度が低い傾向がみられました《図2》。
図2. 睡眠に対する満足度
~中村先生から睡眠改善ポイント!~
良い睡眠のポイントは、量(睡眠時間)・質(安定した眠り)・タイミング(規則正しい睡眠)の3点です。40~50代のミドル世代は、日常生活・仕事の自己管理は比較的できているので、ストレスや生活習慣など何かしらの影響があるのかもしれません。ミドル世代に限らず、寝不足は生活習慣病や認知症のリスクが高まるため注意が必要です。また、入眠してから朝起きるまでに途中で目覚める「中途覚醒」の頻度を聞いたところ、「ほぼ毎日」という回答が約3割(27.9%)となりました。週1回以上の割合を合計すると7割以上(75.3%)に上り、中途覚醒を経験している人が多いことが分かりました《図3》。
図3. 一週間あたりの中途覚醒の頻度
~中村先生から睡眠改善ポイント!~
入眠してから起床するまでに目が覚める「中途覚醒」ですが、原因は一概には言えず、人それぞれです。また、中途覚醒があるから良くないと単純に捉えるのではなく、“中途覚醒が原因で日中に問題が起こっているか”、ということがポイントです。たとえば夜中に目が覚めてお手洗いに行った後、またすぐに眠れる場合はさほど問題ではありません。データとしては、年齢が上がるにつれ中途覚醒は増える傾向にあります。
TOPIC2:睡眠に関して抱えている悩み
◆睡眠に関して8割以上(81.3%)が「悩みがある」。最も多い悩みは「途中で起きてしまう」(41.6%)。
睡眠に関して抱えている悩みについて聞いたところ、8割以上の人(81.3%)が何かしらの悩みを抱えていることが分かりました。特に「睡眠中に途中で起きてしまう」(41.6%)人が最も多く、次に「寝ても疲れが取れない」(35.2%)、「起床後も眠気を感じる」(30.1%)という結果になりました《図4》。
図4. 睡眠に関する悩み(複数回答)
~中村先生より近年の睡眠不足事情について~
ここ数年はコロナ下で不眠の悩みが増えた、という声をよく聞きます。一方で、日中に眠くなる、という悩みは減ったように思います。コロナ下での社会情勢の変化、特に働き方の変化により、在宅勤務で通勤時間がなくなったことによって、その分、睡眠時間が増えたことが影響しているようです。
しかし、最近は在宅勤務から出社勤務に戻り始めたことで睡眠が不規則になり、いわゆる「社会的時差ボケ(ソーシャル・ジェットラグ)」を起こしている人が一時的に増えた印象があります。
◆寝つきが悪いと感じる状況の1位は「熱帯夜」(45.2%)。
寝つきが悪いと感じる状況について聞いたところ、1位は「熱帯夜」(45.2%)と、約半数が熱帯夜に寝つきの悪さを感じていることが分かりました。次いで「梅雨の時期」(25.1%)や「季節の変わり目」(23.9%)という結果になりました《図5》。
図5. 寝つきが悪いと感じる状況(複数回答)
~中村先生から睡眠改善ポイント!~
夏の熱帯夜環境では中途覚醒が増え、睡眠が浅くなりがちです。夏場の理想的な就寝環境は湿度50~60%、室温26℃ですので、もし寝苦しさを感じるのであれば、エアコンの設定温度を見直すことが大切です。弱めの冷房を起床までずっとかけておくなど、寝ている間は快適な室温にしましょう。また、室温だけではなく、体の内部の体温調節がとても重要です。例えば、就寝1~2時間前に入浴し、上がった体温が下がっていくタイミングで横になると眠りに入りやすくなります。
◆睡眠に関する悩みが生じる原因は「仕事や人間関係によるストレス」(37.2%)が最も多い。
睡眠に関する悩みの原因を聞いたところ、「仕事や人間関係によるストレス」(37.2%)が最も多く、続いて「加齢」(33.8%)、「仕事による疲れ」(32.9%)という結果になりました。一方、「わからない」という回答も2割弱(18.4%)見られました《図6》。
図6. 睡眠に関する悩みの原因(複数回答)
◆睡眠不足によって「精神的ストレス」を感じている人(31.9%)が最も多く、睡眠とストレスが互いに悪影響を及ぼしていることがうかがえる。
仕事や身体的な悩みで、睡眠不足が原因だと感じていることについても、「精神的ストレス」(31.9%)が最も多く、続いて「集中力が続かない」(28.5%)、「倦怠感」(25.6%)という結果になりました《図7》。
《図6》の結果と合わせると、睡眠に関する悩みの原因、睡眠不足によって生じる悩みは、ともに「ストレス」が最も多く、睡眠問題とストレスが互いに悪影響を及ぼしていることがうかがえます。
図7. 仕事や身体的な悩みで、睡眠不足が原因だと感じるもの(複数回答)
~中村先生から睡眠改善ポイント!~
多くの人が睡眠不足の原因について「精神的ストレス」と回答しています。受診される患者さんの不眠症状においても、精神的ストレスが特に多い原因です。また、図6、図7の結果から分かるように、ストレスと眠りは相互に影響を与えます。
リラックス状態でなければ入眠できませんし、身体が疲れていて入眠できたとしても、ストレスを感じていると緊張状態から眠りが浅くなります。寝つきが悪くなった結果、寝不足で十分に心身の回復ができず、その状態で日中を過ごすとパフォーマンスに影響が出て、そのことでまたストレスを抱える、という悪循環に陥ります。また、不眠の原因には精神的ストレスの他にも身体的なものや生理的なものなど、様々なものがありますが、夜に寝るときに眠れない原因を探そうとすることで上手くリラックスができず、その結果不眠になってしまうということもあるので、「明日のことは明日、考えよう」と開き直って、リラックスして就寝することが重要です。
TOPIC3:睡眠の質を向上するための習慣
◆約7割(69.0%)は睡眠の質を良くするために何かしら心がけていることがある。そのうち、心がけていることの1位は「お風呂にゆっくり浸かる」(27.5%)。
◆睡眠満足度別に見ると、満足していない人の最も多い回答は「特になし」(29.4%)。
睡眠の質を良くするために心がけていることがあるか聞いたところ、約7割(69.0%)の人が該当しました。具体的な内容は「お風呂にゆっくり浸かる」(27.5%)が最も多く、「日中に運動する」(20.5%)、「就寝する時間帯を決めている」(16.8%)と続きました。また、睡眠満足度別に見ると、満足していない人は、心がけていることは「特になし」と回答した割合が約3割(29.4%)に上り最も多く、満足している人より7.6ポイントも多い結果となりました。全体で1位の「お風呂にゆっくり浸かる」も、満足している人は35.1%、満足していない人は24.4%と、10ポイント以上も差があり、各項目において睡眠に対する意識の差が見られました。また、満足している人は、5人に1人(20.0%)が「飲酒量・頻度を減らす」と回答しています《図8》。
図8. 睡眠の質を高めるために心がけていること(複数回答)
※上位1~5位を記載
~中村先生から睡眠改善ポイント!~
睡眠の質をすぐに上げることは難しいのですが、下げないようにすることはとても大切です。お風呂にゆっくり浸かることは、たしかにリラックス効果が期待できますが、仕事で遅く帰宅して入浴時間の確保が難しい場合などは、睡眠時間を優先してシャワーで済ませるのがよいでしょう。また、睡眠前の飲酒は寝つきが良くなっても、睡眠の質を下げる影響があるため、嗜む程度にした方が良いでしょう。睡眠の観点で言えば、重視するのは「リラックス」です。自分に合ったリラックス方法を見つけ、臨機応変に取り入れていくことが大切です。
TOPIC4:第一三共ヘルスケアが推進する睡眠に着目した健康経営
■睡眠の質改善が日中のパフォーマンス向上に寄与。企業が社員の睡眠に取り組む意義。
「睡眠」は、人生のうち約3分の1の時間を費やすといわれているほど、私たちにとって重要な生命活動です。しかし、日本人は世界的に見ても睡眠時間が少なく、睡眠時間を削ってでも勉強や仕事をする人は少なくありません。実際には、睡眠不足になると、ケアレスミスが増えたり、集中力が低下して勉強や仕事にかかる時間が長くなったり、健康を損なう、遅刻や欠席・欠勤が増えるなど、勉強や仕事の効率低下につながります。睡眠不足を原因とした日本の経済損失は、年間約15兆円(*1)にも上るといわれているほどです。近年テレワークが普及し、生活のリズムが崩れる人や、出社と在宅のハイブリッドワークにより睡眠時間が乱れて寝不足になる人が増えていたり、潜在的な睡眠不足が深刻な交通事故の要因となったりするなど、社会課題として認識されています。
一方、2021年に睡眠測定アプリを用いて実施した実証実験(*2)の参加者からは「睡眠に課題を抱えている認識があったが実際には十分に眠れていることが分かって安心した」などのコメントが寄せられました。このように、まずは自分の睡眠の状態を可視化し問題を分析してから、生活習慣を変える「行動変容」を起こすことが有効です。睡眠はプライベートの時間にとるものであり企業が介入しにくい部分ですが、企業が社員の睡眠状態を底上げするサポートができれば、健康経営のさらなる推進や、個々人の日中のパフォーマンス向上、私生活と仕事のバランスの維持、さらには社員のエンゲージメント向上などにつながることが期待されます。
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