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  • インボイス制度に対するフリーランスの不安:調査結果まとめ

  • 2023/08/07 0:00 公開  編集部
  • ソリマチグループが行った「フリーランス・小規模事業者のインボイス制度への対応実態調査」によれば、10月1日から導入されるインボイス制度への対応が小規模事業者では76.0%、フリーランスではまだ34.0%と、対応が遅れていることがわかりました。特にフリーランスからはお金に関する不安が上位に挙がり、インボイス制度の影響に対して不安視している実態が浮き彫りになりました。

     

    インボイス制度への理解は全体の8割超えの一方、フリーランスの対応は約3割に留まる。

    インボイス制度への理解について聞いたところ、「よく知っている」「概要を知っている」とした人が82.3%と全体の8割を超える結果になりました。(グラフ①)インボイス制度の発表から数年が経ち、フリーランスや小規模事業者にまで、インボイス制度についての理解が進んでいるようです。また、インボイス制度への対応状況を聞くと、「すでに対応している」「2023年10月までに対応予定」と答えた人は、小規模事業者は76.0%であることに対し、フリーランスは、34.0%にとどまりました(グラフ②)。

    国税庁から発表された2023年3月末の課税事業者の登録数※、法人の約88%、個人事業者の約53%と比較しても、依然として事業規模の小さい人たちの対応が遅れていることがわかります。さらに、インボイス制度に対して「対応する予定がない」と回答した人は、小規模事業者は11.0%だったのに対しフリーランスでは31.5%と約3倍の回答となっています。(グラフ②)

    ※出展:令和5年4月 国税庁「インボイス制度の周知広報 の取組方針等について」:リンク

    グラフ①
    グラフ①

    グラフ②
    グラフ②

     

    上位には「手間がかかりそう」「忙しい」と対応を後回しにしている実態も明らかに。

    現時点でインボイス制度への対応をしていない人(211人)に対し、インボイス制度への対応を行なっていない理由を聞くと「免税事業者でいることを決定(または検討)しているから」(32.7%)が最も多く、次いで「現状の事業や売上に影響がなさそうだから」(26.1%)、「取引先の都合上、課税事業者になる必要がないから」(19.9%)、「手間がかかりそうだから」(18.5%)、「忙しいから」(12.8%)という結果になりました。(グラフ③) 事業の判断として、課税か免税かを選択している回答が上位に挙がる一方、「手間がかかる」「忙しい」と対応を後回しにしている回答も上位に挙げられ、少数で事業を行っているフリーランスや小規模事業者ならではの事情が明らかになりました。また、インボイス制度に対応済または10月の開始までに対応すると回答した人(144人)に対し、どのように対応するのかを聞くと、「会計ソフトを利用」(35.4%)が最も多く、次いで「顧問に任せる」(31.3%)、「自身で対応」(29.2%)と続きました。(グラフ④) 

    グラフ③
    グラフ③

    グラフ④
    グラフ④

     

    インボイスへの対応状況を確認された人は約半数。中には予定がなかったが依頼で対応した人も。対応状況確認をされた副業のフリーランスの約8割に困った経験も。

    「取引先からインボイス制度への対応状況・適格請求書発行事業者番号について、確認されたことはありますか」という質問に対しては、約半数の45.3%が「ある」と回答しました。(グラフ⑤) 確認されたことがあると回答した人(136人)のうち「対応状況の確認のみ」が61.0%、「対応依頼があり元々対応していた(予定)のでインボイス制度に対応した」人が37.5%いることが分かりました。また、少数ではありますが、「対応予定はなかったもののインボイス対応を依頼されたので対応した」人も9.6%いました。(グラフ⑥)

    またインボイス制度への対応状況や適格請求書発行事業者番号を確認されたことがあると回答した人(136人)に、インボイス制度対応を行なった結果、困ったことがあったかを聞くと、小規模事業者や本業でフリーランスの人の8割以上が「特にない」と回答しました。一方、副業でフリーランスをしている人に限ると、 「売上への影響が出た」「取引が中止になった」「予定外の出費が発生した」のいずれかを回答した人が77.4%もいるように、約8割の副業でフリーランスをしている人に対して、影響がでている実態が明らかになりました。(グラフ⑦)

    グラフ⑤
    グラフ⑤

    グラフ⑥
    グラフ⑥

    グラフ⑦
    グラフ⑦

     

    インボイスへの対応に過半数が不安。フリーランスは「収入」、小規模事業者は「対応業務」へ不安が上位に。相談先は、フリーランスは「相談先がない」が最も多く、3人に1人が孤立している実態も。

    インボイス制度への対応について、全体の58.3%が「とても不安がある」「不安がある」と回答し、過半数を超える人が不安を感じていることがわかりました。(グラフ⑧) インボイス制度への対応に不安を感じると回答した人(175人)に対し、不安の理由を聞くと、フリーランスは、「収入が減る」(47.6%)が最も多く、次いで「経費が増加するかもしれない」(35.5%)、「請求業務への対応が増える」(34.7%)が続き、収入面での不安が上位に挙がりました。(グラフ⑨) 一方、小規模事業者では、「請求業務への対応が増える」(43.1%)が最も多く、次いで「経費が増加するかもしれない」(29.4%)、「対応方法がわからない」(21.6%)が続き、インボイス対応業務に関する不安が上位に挙がりました。(グラフ⑩)

    インボイス制度への対応に不安を感じると回答した人(175人)に対し、インボイス制度の相談先について聞くと、小規模事業者では多くの人が「税理士」(80.4%)と回答しました。一方、フリーランスでは、「相談先は特にない」(35.5%)が最も多く挙げられ、約3人に1人は困った時の相談先がないという状況も明らかになりました。(グラフ⑪⑫)

    グラフ⑧
    グラフ⑧

    グラフ⑨
    グラフ⑨

    グラフ⑩グラフ⑩

     

    グラフ⑪
    グラフ⑪

    グラフ⑫
    グラフ⑫

     

    請求書の毎月の平均発行枚数は、フリーランスの8割、小規模事業者の7割が平均10枚以下。インボイス対応のサービス導入にはコストをかけたくない意向が鮮明。

    インボイス制度の主な利用の内、請求書の発行実態を明らかにするため、毎月の平均請求書発行枚数について聞くと、フリーランスの82.5%、小規模事業者の71.0%が「10枚以下」と回答しました。(グラフ⑬) また、インボイス制度に対応している請求書発行システムがあったら導入したいかという問いには、「無料であれば利用したい」(44.3%)が最も多く回答されました。(グラフ⑭) さらに導入済または導入意向がある人(176人)に対し、インボイス制度に対応している会計システムで重視したいことを聞くと、「コストが安い」(54.0%)「簡単に使え、省力化できる」(48.3%)、「セキュリティが堅牢」(33.0%)の順で回答が挙がりました。(グラフ⑮) これらのことから、インボイス対応サービス導入に、フリーランスや小規模事業者がなるべくコストをかけずに対応していきたいという意向が見受けられました。

    グラフ⑬
    グラフ⑬

    グラフ⑭
    グラフ⑭

    グラフ⑮
    グラフ⑮

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