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  • 気候変動のリアルな危機感を、企業・農家・漁師・保護者・医師・アスリートが訴え 「今、声をあげなければ」 1.5度目標のための記者会見

  • 2024/12/05 11:00 公開  リアルプレス
  • 日本気候リーダーズ・パートナーシップ(以下、JCLP)は、日本政府による「温室効果ガス排出削減目標(以下、NDC)」の検討が最終局面を迎える今、生の声による気候変動のリアルな影響と、日本の適切なNDCに関する「JCLP 緊急記者会見」を開催しました。

    JCLP(※)は現在、企業や生活者などから気候変動の影響に関する声を集め、深刻な影響を避けるための国際合意「1.5度目標」に沿ったNDCの実現に向けた機運を高めるため、「#だから1・5度」キャンペーンを実施しています。(※JCLPとは、持続可能な脱炭素社会の実現には産業界が健全な危機感を持ち、積極的な行動を開始すべきであるという認識の下に2009年に発足した、日本独自の企業グループ。脱炭素社会への移行を先導することで、社会から求められる企業となることを目指しています)

    このキャンペーンを通じては企業のみならず、一次産業従事者の方々や子どもの健康を憂う保護者などから気候変動の影響に関する「生の声」が集まっていると言います。その危機感を広く共有するため、「JCLP 緊急記者会見」では、当事者を交えてパネルディスカッションを展開。さまざまな立場のゲスト6名が登壇。現場のリアルで深刻な状況を説明しました。

    今井雅則さん(企業/JCLP共同代表/戸田建設会長)は、建設現場で働く従業員用のファンの付いた作業着姿で登壇。熱中症について今井さんは、「非常に熱中症が増えている。外部で作業している人ほど熱中症、死亡者が出ている状況だ。空調服を着ているが、今年はさすがに外気温が高すぎて効果がないところまで追い詰められている」と窮状を説明しました。高気温では作業ができず経済が止まるほか、災害の復旧復興も担当しているため、救助もままならないという現実を訴えました。

    相模湾・三浦半島で漁師をしている長久保晶さん(漁師/湘南漁業協同組合葉山支所)は、収穫量の大幅な減少について説明。「10年前は沿岸に海藻が大量にあるのが当たり前だったのが、温暖化の影響で食欲が落ちないムラサキウニに葉も茎も食べられてしまい、今ではほとんど残っていない。漁獲量では、10年前は網で5キロほど収穫できていたサザエの水揚げが、先日は3つしか取れず、3つで大漁では話にならない。漁師として仕事を続けていけない状況になっている。どうすれば漁業が続けていけるか今考えないと、このままでは5年後には、相模湾からワカメやヒジキなどがいなくなってしまうのではないかと言われているほど海水温が高く、他の魚も含めて収穫量が減っている」と現状を解説しました。

    山梨県北杜市で野菜の生産をしている井上能孝さん(農家/株式会社ファーマン代表取締役)は、「20数年前から、山梨県の北杜市で農業をしているが、最近では、温暖化の影響でこれまで見かけなかった白菜の軟腐病(※1)が見られ、これが初めて今年確認された。また、局所的な豪雨やそれに続く乾燥の影響で、同じく収穫に大きな影響を及ぼす、大根のホウ素欠乏(※2)なども発生している。かぼちゃならまだ外見で分かるが、大根の場合は外見からは野菜の中がそんな状況になっていることはまったく分からず、そのようなものを出荷するわけにいかないため、畑の2割の野菜にこの症状が発生した場合は収穫を取りやめ、その収入をあきらめなくてはならない。キャベツが一玉500円という報道があったが、その前段階で僕らのキャッシュフローに影響を与えている。クーラーも7月から9月まで使い、光熱費もかかる」と深刻な収入減を訴えました。

    ※1.軟腐病:作物の地面に近い部分が腐り、異臭を放つ病気。潅水や降雨により、土壌中の原因菌が作物に付着することによって感染する。
    ※2.ホウ素欠乏:植物が生長するために必要な微量要素の一つ、ホウ素が土壌中から十分吸収されないことによっておこる生育不良。ホウ素は主に植物の細胞壁を構成する成分で、これが欠乏すると、大根の場合芯が黒く変色して空洞ができるなどの影響がでる。

    入江知子さん(保護者/J リーグ サステナビリティ部 部長)は、母親視点で子供が直面している暑さについて言及。「九州でサッカーコーチをしている方のお話しで、チームのお子さんから試合前日に『サッカーに行けない』と連絡があり、理由を尋ねると人工芝が熱すぎて、スパイクとソックスを履いていたのに足の裏が火傷してしまったとのこと。娘が通っている保育園でも猛暑の関係で、9月以降もずっと室内遊びをしているなど、スポーツに夢中になることや、自由に遊べる環境が少なくなっていると、親として、またサッカーに仕事で関わる立場として感じている」と説明。

    藤原武男さん(医師/東京科学大学教授)は、気温の上昇が日本でも子どもの喘息入院リスクになることを指摘。「気候変動は子供の健康に危険を及ぼすものであると、改めて皆さんに認識いただきたい。今までは、早産になることや川崎病などの病気にかかるリスクが懸念されていたが、現在1番関心が高まっているのが『喘息病』。このままいくと2100年には気温が4度上昇すると言われており、先日発表した研究によると喘息で入院する子供の数が現在の4倍になると推定され、これはもう医療崩壊だ」。

    また、夏だけでなく冬の影響について河野健児さん(アスリート/プロスキーヤー)が、プロスキーヤーの視点で気候変動を分析。「世界でも有数の雪が降る地域として知られている、長野県の野沢温泉のスキー場で長年活動をしているが、ここ10年で顕著に雪が減っているなと感じている。また、1月のハイシーズンに、雪ではなく土砂降りの雨が降るなど、これまでにない状況が起きている。今後雪がなくなると、スキー、スノーボードだけでなく、雪解け水が作る温泉や米など、我々の生活に大きな影響があると考えらる。30年以上雪の上に立ち続けていますが、ここ10年以上は顕著に気候変動、気候危機の影響が出ていると感じる」と訴えました。

    また今回、モデレーターも務めた松尾雄介 JCLP 事務局長は、「気候変動にとっても極めて重要な政策が今決定しようとしており、日本が出す2035年の目標(NDC)次第で、方向性が決まって来る。さらにトランプ政権が始まる今、G7の中で『日本がどのような方向性を出しているのか』に世界中が注目している状況だ。残り僅かの期間で決まると承知しているが、各企業や一次産業の方々が語るリアルな声をきちんと聞いて、将来を含めて意思決定をしていただきたい」と危機感を持って窮状を訴えました。

    「日本気候リーダーズ・パートナーシップ」公式ホームページ
    https://japan-clp.jp/

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